妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
「札? 札ならきちんと持ち歩いていますよ。ほら」
八千代は懐から札を取り出すが、それを見た団右衛門はますます驚く。札は経文を塗り潰し、真っ黒に染まり効果を失っていたのだ。
「いや八千代、これ明らかに駄目になってるだろうが! なんでおかしいって言わなかったんだ」
「だ、駄目になってるんですかこれ!? こんなに邪気を吸い込んでるから、凄い代物だと思っていたんですが……」
「ああ、そう勘違いしてた訳か。いいか? これは札に書かれた経文が消えれば効果がなくなる。だから水に浸けて文字が消えたり、こんな風になったらただの紙切れだ。新しいのをやるから、そっちを持ってろ」
団右衛門は袖から札を一枚出すと、八千代に渡す。八千代は感心して頷きながら受け取り、仰いで眺める。だが団右衛門は気が付いていなかった。八千代が札を懐に入れた時、既に札の端が黒く変色していた事に。
「それと、本題だ。嘉明が起きたから、無事な顔を見せてやりな。状況の整理もしなきゃならないし、夕飯は後にして部屋まで行くぞ」
「嘉明様が、目覚めた……? 本当ですか、団右衛門さん!」