妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
(嫉妬……? 馬鹿言え、こんなんでいちいち嫉妬してたら、殿様の相手なんかしてられないぞ。オレはオレ、他は他だ)
自分の中をくすぶる火種を踏み潰し、団右衛門は溜め息を吐く。微かに漏れた苛立ちは、嘉明の目には入らなかったが、ぴったりと身を寄せる八千代には聞こえてしまう。八千代は団右衛門を見上げると、真剣な目を向けた。
「ぼく、嘉明様を傷付ける奴は何者でも許せないんです。だから……仲良くしてくださいね」
「あ、ああ。そりゃ、もちろん……」
「良かった。団さんも、嘉明様と同じくらい頼りにしています!」
胸に埋まる八千代を見れば、団右衛門もそれを無碍には出来ない。相手は自分より年下の、少し人付き合いの下手そうな生真面目な少年だ。
「なに、オレを兄貴分だと思って構わないぜ! 何てったって、オレ様は最強だからな!」
強気な言葉は、心の狭さの誤魔化し。分かってはいても、団右衛門はそう口にするしかなかった。
「はい、よろしくお願いします」
だが、団右衛門は自分の心に手一杯で、八千代の心にまで気を向けていなかった。嘉明に恋慕を抱くなら、八千代もまた団右衛門と同じ想いを抱く事になるのだと。
つづく