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愛の裏側

第3章 *すれ違う心

 





リビングに行くと、テーブルに乗った皿の上に、焦げたパンが一枚あった。



私が「ぷっ」と噴出すと、お父さんは少し照れ臭そうに頭を掻いた。




パンですら上手に焼けないなんて、本当に大丈夫なのだろうか。



一人暮らしのときとか、どうしてたんだろう。



少し疑問に思いながらも、私は食パンの耳にかじりついた。








「…ごめんな、藍。こんなこともまともにできないし、駄目な父さんで」



「え、いや…いいよ。美味しいし。無理しなくてもいいの」




「見守ってやるしか、俺にはできないんだ。…学校で何があったのか知らないが、…その…」








ゴニョゴニョと口ごもるお父さん。




そっか、貴方にはお見通しなんだね、もう。



私を一番見てきたのは、きっとお父さんだ。









「…いいよ、もう…っ言わなくて、いい。わかったから…ありがとう…」









最後の一口は、涙の味がした。






 

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