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闇夜に輝く

第3章 複雑な家庭環境


海斗はそれまで貯めていた僅かな貯金を元に一人暮らしを決意した。

そこで問題になったのは半分しか血の繋がっていない妹の若菜。
母親とは全く血が繋がっておらず、父親も行方不明。
ただ、妹はまだ中学生。
しかし、妹がどうしても海斗と住みたいと言ってきたので仕方なく一緒に住むこととなった。

そして学歴も資格もない海斗でもそこそこの収入を得る事ができそうなのがキャバクラのボーイだった。

新しい住まいで妹の転校の手続きを済ませてから、早4ヶ月。

妹の若菜は海斗の健康を気遣い、毎日ご飯を一生懸命作っていた。

しかし中学生と水商売の人間とでは、生活サイクルが真逆な為に会う事も会話をする事もほとんどない。
必要な事はテーブルの上のメモ帳でやり取りをする事が多かった。

ただ、そんな環境にお互いがほっとしていた。
海斗自身、兄としての自覚は殆どない。
正直面倒に思うこともある。

若菜もそんな海斗の心境を察してか、なるべく自分で何でもやろうとする。

海斗は生活費として毎月6万円を渡してやりくりを頼んでいた。

気づけばここ数ヶ月、毎日ただ仕事だけをしていた。

夕方に出勤し、朝方帰る。シャワーを浴びてリビングへ行くと、前日の夜に妹が作ってくれてた食事が置いてある。
それを食べて寝る。
起きるとすでに昼過ぎで、妹は学校に行っていてすでにいない。
テーブルには妹が朝に作ったであろう簡単な食事が置いてあるのでそれを食べる。
夕方、妹が帰ってくる前に家を出る。
出勤時間にはまだ早いため、神社の境内で時間を潰す。

そしてまた夜の仕事を繰り返す。

何の色もない、人との関わり合いが希薄な日常。

しかし、海斗にとってそれはとても穏やかな日々に感じられた。

実家にいた時は、家庭内がピリピリと張りつめて休まる事がなかった。
今はこの境内での一時だけでも何も感じなくて済むことが救いだった。


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