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闇夜に輝く

第15章 営業中のトラブル

そしてまたホールを見渡す。
片付けの途中で放置されたテーブルが目に入った。
先程まで西野さんがいた場所なのにいない。
どこへ行ってしまったのかとフロアを見渡す。
するとカウンターの奥の、フロアからはほとんど見えない場所にあるキッチンに、西野さんの茶色い頭がかろうじて見えた。

しょうがなく海斗が放置されたテーブルを片付けていると、増田さんのインカムが飛んで来た。

『14番テーブルが時間10分前だ。西野、延長確認行ってこい』

西野さんの返事がない。

『おい!西野!西野取れる?』

増田さんの呼びかけだけが耳元に響く。

見かねて海斗が割って入る。

『西野さん、今キッチンに入ってますよ。キッチンです』

『チッ!海斗、延長確認行ってくれ。14番、14番テーブル』

『14番テーブル了解、了解です』

14番テーブルを見ると杏奈さんの卓だった。
接客をしつつも、しきりと不安そうにこっちを見たり、キッチンの方を見たりしている。
指名客への接客なのにあまり盛り上がってない事も気になった。

海斗は慎重に延長確認を行う。

「失礼します。そろそろお時間…」

と言ったところで、杏奈さんの形相が変わる。
客もむすっとした表情のままだ。
嫌な予感がする。一旦仕切り直すことにした。

「失礼いたしました。もしかして何か御注文のお品がありましたでしょうか?」

すると杏奈さんが不満そうに応える。

「あんな〜、さっきな〜、シャンパン頼んだのに全っ然こないんやけど!」

「大変申し訳ございません。直ぐにお持ちいたします」

海斗は慌てて姿勢を正し、深々とお客さんに向かって頭を下げた。

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