闇夜に輝く
第16章 営業後ミーティング
いつもの優矢君らしくない。
明らかに何か意図を感じた。
そんな優矢君の思いに海斗は強い覚悟で答える。
「今回の営業中のトラブルに関して言えばホール長の俺の責任です。今までは西野さんが先輩ということもありましたし、西野さんも今月から副主任という立場になりプライドもあったと思います。なのでホールのことに関しては自由に動いてもらっていました。これからは自分の部下として指示を的確にしていきたいと思います。そして業務を離れれば先輩ですし歳上でもあるので敬意は払っていきます。また、そのことを西野さんにもはっきりと伝えます」
そこまで言ってから一呼吸置いてまた続ける。
「それに、俺は増田さんの力になりたいと思っています。つまらない人間の俺をここまで見守ってくれましたから。増田さんが西野さんを必要とするならば俺は上手くフォローし、お互いが良い仕事ができるようにして行こうと思います。増田さんは感情を仕事に持ち込むなとキャストに言っていましたよね。それは僕らにも当てはまりますよね。好き嫌いで仕事に支障をきたしていたらキャストに示しがつきません。あの子達はもっと面倒でウザったい客相手に毎日頑張ってくれているわけですから」
後半は新人の二人に言い聞かせるような内容だった。
西野さんの言動にいちいち感情を左右されているうちは、今後もっと気難しいであろうキャストの管理なんてできないから。
ただ、この店に入ったばかりの彼らに今の言葉を言ったところで心に届くのかは疑問だったけれども。
少なくとも入ったばかりの自分を思い出すと、今の言葉ではピンとこないなと思った。
ふと優矢君を見ると、先程の厳しい表情は消えてニコニコとしていた。
海斗は優矢君の意図を確信した。
( ありがとう )
海斗は視線だけでお礼を言う。おどけた表情でそれに応える優矢君。
増田さんにこれだけ真っ向から反論出来る人物は優矢君以外にいない。
それから、西野さんよりキャリアの浅い人間の不満を代弁してくれていたのだ。
海斗はこんな立ち回りが出来る優矢君を心底尊敬した。
おかげで納得出来る結論に達するまで話し合えた。