闇夜に輝く
第5章 流れのままに
改めて見るその子は素朴そうな普通の子だった。
普段見慣れている着飾ったキャストに比べると、目立たない印象。
それでも、目鼻立ちは整っていて、化粧っけのない顔にはどこか儚げな表情があり、普段接しているキャストとは別の透き通った透明感を感じた。
「俺、ここの店のボーイやってる筑波海斗って言います。突然声かけてごめんね。この傘上げるから落ち着いたら帰りな。それまでここで休んでていいからね」
それだけ言って海斗はまたビルの入口から外を見つめ、フロント業務に戻る。
二人の気まずさを表す様にしばらく雨音だけの静寂が続いた。
暫くして後ろから声をかけられた。
「あの、ここってキャバクラなんですか?」
海斗は半身だけ向きを変え、壁に寄りかかりながらその声に応える。
「そうだよ。今日はめっちゃ暇ですけどね」
「あの……、私でも働けますか?」
「え?あー、うん。18歳を超えてれば多分大丈夫だよ。俺も入ったばっかりだからよくわかんないけどね」
「あ、そうなんですか。筑波さんは入ってどのくらいなんですか?」
「俺はまだ4ヶ月くらいかな。もし働きたいなら店長に伝えるけど」
「あの、私、こういった所の経験ないんですけど大丈夫ですか?」
「あ、うん。未経験で入った子も結構いるし問題ないと思います。どうする?」
「あ、あの……、お願いします」
「わかった」
俺はインカムで店長を呼んだ。