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闇夜に輝く

第6章 初スカウト、そして……

「お店のシステムと給与形態はだいたいこんな感じです。あとは徐々に慣れていけばいいから。それから、わからない事は担当の海斗にきいてね」

は?今なんて言いました?俺が担当?
全然話を聞いていなかった海斗は急に挙動不審になる。
それを見た増田店長が不敵な笑みを浮かべている。
それまで淀みなく続いていた話が急に止まり、違う空気を感じ取った咲さん。
海斗と店長を交互にみたあと、遠慮気味に

「あの、ケイトさんてどの方ですか?」

その言葉に増田店長が一瞬きょとんとした後、笑った。

「えーと隣にいるよー。自分の名前も伝えてなかったのかな?カ・イ・トくん」

「いや、外で名前は言いましたけど」

「あ、筑波さんのことですね。すいません。てっきり外国の方のお名前だと思ってしまって……」

そういって咲さんは少し恥ずかしそうに頭を下げた。
その仕草を見て店長の言っている意味が少しわかった。
可愛げと恥じらいと、少し抜けている所。それを計算でするようなあざとさが見られない。
それを僅かな時間で見抜いた店長はさすがだとこの時思った。
ただ、それよりも担当って発言の方が気になった。
なぜなら、素材がイイといっているキャストをわざわざ管理経験のない俺に任せてどうするのか。
キャストの愚痴や相談や悩みを聞いて、まめに対応する先輩達の気苦労を見ていると、自分にどこまで出来るのか不安しか無い。
しかし、一人であれこれ考えているうちに店長は早々に咲さんの初出勤日を決めてしまっていた。
そして下まで送っていくように指示され、店を出る羽目になってしまった。
こうして咲さんの入店と海斗の初担当が勝手に決まってしまった。

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