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闇夜に輝く

第29章 結衣菜の秘密

もう一度顔を覗き込む。

「お、おはようございます…」

気まずそうに挨拶をしてくれる結衣菜さん。

「…やっぱり結衣菜さんか。高校生、だったんだ」

「すいません。あの、店には内緒にして欲しいんです」

「えーっと…」

「お願いです。あの店好きなんです。辞めたく無いんです」

スーツ姿の海斗に向かって、神妙な顔でお願いしてくる制服姿の結衣菜さん。

その光景を同じ学校の生徒達がジロジロ見ながら通り過ぎる。

海斗はこれ以上目立つのはよくないと感じた。

「ちょ、ちょっと待って。ここで長話するのはマズいかも。対応策を考えるからさ、学校終わったら会える?」

「分かりました。後で連絡します」

「うん、とりあえず、行ってらっしゃい」

「ぷっ、行ってきます。はは、海斗さんにそんな事言われるなんて何かウケる」

少し空気がほぐれる。
おかげで海斗もやっと冷静になれた。
そして優しい口調を意識しながら話す。

「もう、結衣菜さんには困らされてばっかりだな。まぁ、絶対悪いようにはしないから、ちゃんと学校終わったら連絡して。それからこの事は誰にも言わないようにね」

「はーい。わかったぁ。海斗さん行ってきまーす」

結衣菜さんは少し安心したのか、いつものあっけらかんとした表情に戻り、手を振りながら歩いていく。

海斗は硬い笑顔のまま、結衣菜さんを見送った。
階段の下で同級生らしき女子高生と合流した結衣菜さんは、そのまま高校へ向かっていった。

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