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闇夜に輝く

第30章 スカウト



その光景をビルの前でポカーンと見送る海斗。

不意に服を少しだけ引っ張られた。
振り向くとそこには先ほどの撮影の時の輪の中にいた女の子が立っていた。
確か名前はサラさん。
撮影中はずっと海斗の近くにいて結構話していた。
身長は小さく、アゴが若干尖っているけど、目鼻立ちのハッキリした北欧系ハーフっぽい顔立ち。
けれど、メイクや私服のセンスがアンバランスで、ちょっと残念な印象だった。


「あ、サラさん。さっきは楽しかったね。あれ?一緒にいた女の子は?」

「あ、さっき別れた。海斗さんこれから予定ある?遊びにいきたい」

「いーよー。どこ行こっか。とりあえず渋谷まで行く?」

「うん!あ、でも私あんまり渋谷行ったことない」

「そっかぁ。じゃあ適当に街を回ろっか」

そうして電車で渋谷へ向かう途中で色々と聞いた。

サラさんは福島から出てきて1人暮らしをしながら、池袋の近くにある大学に通う2年生。
海斗と同い年の二十歳だった。
よく行く街は池袋らしくあまり渋谷へは来ないらしい。
元々、東京の人間じゃないから行動範囲が狭くて、普段は自分が分かる場所にしか行かないみたい。
今日も大学の友達に連れられてきたのだが、その後その友達は予定があるらしく別行動に。
六本木は初めてで1人じゃ不安だったけれど、友達にバカにされそうで言えなかったようだ。
そこに海斗が立っていて藁をもすがる気持ちで海斗の服を掴んだらしい。

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