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闇夜に輝く

第30章 スカウト

そんな会話をしているとシャンパンが運ばれてきた。

海斗はバーテンダーの手つきをじっくりと見て、一つ一つの動作を観察する。
ボトルの開け方、グラスへの注ぎ方、その時の姿勢、お客さんの前へ持っていき方、シャンパンクーラーへのボトルの置き方。手の動きや位置。
どうすれば滑らかで華麗に美しく見えるのか。
高い値段に見合うサービスはこういった所作にも現れる。
この時ばかりはサラさんの存在を忘れて集中していた。

同じように固まっているサラさんに気付き、海斗はにこやかに笑い、目の前のグラスを手に取り乾杯をする。

そしてグラスにシャンパンがなくなるタイミングでスッと注ぎにくる店員。
素早く注ぎ、そして会話のタイミングさえも考えて、客の前に置く。
小さなアイコンタクトや手振りのみで明確な意図を客に伝え、サービスを行う。
海斗はこういった動作の一つ一つを脳裏に焼き付けて自分の接客に活かそうと考えていた。
やはり、今日この店でシャンパンを頼んで良かったと思った。

気づけばサラさんと渋谷に来て4時間程経っていた。
お互いの連絡先を交換しその日はそれで別れた。

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