テキストサイズ

闇夜に輝く

第7章 営業前の一幕

「はざーっす!!」

そんな空気を打ち破るように一人の男が出勤してきた。

「あれ?何かあったん…、あー、お疲れっす」

瞬時に何かを察したその男は若干声のトーンを落とし様子を伺う。坂東さんと目が合い、アイコンタクトで状況を把握する。
この男、名前は優矢君。増田店長の従兄弟で歳は19歳。
基本的に店外にいる。契約に縛られない自由人。実際、どんな形で給料を受け取っているのかよくわからない。この人だけタイムカードが無いし。
ただしスカウトや客引きにかけてはこの街でナンバー1との呼び声が高い。
さらに、この歳にしてSEX人数4ケタ越えのスーパーマン。
忙しいときは店内業務も手伝い、やろうと思えば付け回しも延長確認もできるなんでも屋さん。
その容姿と雰囲気からよくホストに間違われるが、街では昔からかなり有名らしい。
悪い人とも顔見知りで情報通。もちろん街で会うそれっぽい女の子はだいたい知り合い。
フリーでスカウトしていてもスカウト会社から文句を言われないあたり、どんな交友関係があるのかはなんとなく察することができる。
まぁ、生まれついての夜の住人。ただ、周りからの評価はものすごく高いのに本人に全くその気がない。
社長にも社員になれと言われているがのらりくらりとかわしている。
事実、優矢君が手伝うようになってから、入ってくるキャストの質がグッとあがった。
そして彼自身、実は学生だったりする。
本人いわく

「本業にしたら女を自由に食えなくなるからヤダ」

だそうだ。
人あたりが良くお客さんからも愛されている。俺のような新人にも気さくに話しかけて和ませてくれることも多い。
優矢君が俺と店長がいる席をチラリと確認したあと、なぜか俺の隣に座った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ