闇夜に輝く
第7章 営業前の一幕
「おはようございます。今日の海斗さんいつもと何か感じが違いますね。何かあるんですか?」
店長の不機嫌な態度には一切触れずに俺が読んでいるファイルを覗き込んできた。
「いゃ、何かいつの間にか担当キャストが出来ちゃって、色々とわかってないとまずいかなぁと思ってさ」
「あー、お疲れ様です。偉いっすね。俺なんか女の子にシステムの説明したことなんてほとんどないっすよ」
「マジで?じゃあいつも連れてくる子には何て説明してるの?」
「んー、一緒に頑張ろう的なノリで話してますけどね。大まかなシステムなんてどの店もあんまり変わらないし。それより、身の上話をよく聞いてその子が働ける環境を整えるように動いてあげると自然と信頼関係ができますからね。そうすると、俺のために何か出来るか聞いてくるんで、じゃあ一緒に働いてみる?的な感じです。ただ、俺は基本的に店外なんで、話が違うじゃんってよく言われますけど」
そう言って少年のように屈託無く笑う。
こういう、普段のドライなイメージとのギャップが人を惹きつけるのだろう。
「まったく・・・、お前の話は全然参考にならないなぁ」
増田店長は新聞から目を離しポツリと呟く。
先程の西野さんと同じような発言にも関わらず、増田さんはいつの間にか不機嫌さはなくなり、呆れたような笑顔を浮かべている。
そんな増田さんに優矢君が笑顔で言い返す。
「そりゃそうだよ。だって俺自身、誰かを参考にしたことなんてないもーん」
「嘘つけよ、この前は俺を見習ってるって言ってたじゃねーか」
「あれは給料前借りするために……、じゃなくてえーと…」
「そうか、お前の気持ちはよーくわかった。今度女と揉めても助けてやんねーからな」
「ちょ、兄貴、まじソンケーしてます」
「はいはい。行動で示してくれればそれでいいよ」
「OK!スカウトがんばる」
この二人の関係はなんだか微笑ましい。そしてテンポのいい言葉のやり取りや、自分のキャラを最大限に生かす話術が女心を惹きつけるのだろう。