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闇夜に輝く

第32章 戦場のメリークリスマス


そんな中、咲さんも忙しさのあまり、かなりテンパっていた。

一番忙しい23時に指名が3つ被る。
坂東さんは短い時間で咲さんに確認する。
どの客を優先するのか、どの客の延長をとって、どの客を帰すのか。
しかし、うまく答えられない咲さん。

痺れを切らした坂東さんが海斗へインカムを飛ばす。

『海斗、咲さんの指名はどうすればいい?』

『今、そっちへ行きます』

そして海斗は坂東さんと咲さんの元へ駆けつけると口頭で手短に伝える。

「咲さん、神谷様は昔からのお客だから俺でもある程度対応出来る。それにいつも通り午前1時までには帰るはず。町田様はそろそろ切り時だからこの際ほっとこう。松原様は最近掴んだ客だし、今が一番お金を使う時期。多分ラストまで居るつもりだと思う」

海斗が早口で咲さんに指名客への対応方針を伝える。
咲さんも頷きながら必死に海斗の言葉を理解しようとしている。

指名被りで大切な事はどの指名客を優先するかの判断。
表向きは均等に指名キャストを付け回しますとお客へ伝えているが、そんなのは建前。
キャストにとって指名売上がダイレクトに評価される世界。
太客を上手に優遇するのは当たり前なのだ。

海斗は坂東さんにも伝える。

「松原様が優先で次が神谷様、この二人は延長狙うのでヘルプもそれなりの子をお願いします。逆に町田様は次の時間で帰ってもらうし適当な子で。だけど、日付が変わる時間は必ず神谷様に付けて下さい。これをしないとかなり機嫌を損ねるので。その後は松原様の席を多めに。それから、このあと咲さん指名の初芝様も1時過ぎに来店予定なのでそれも考慮して下さい。咲さんもそれでいいね?」

「はい。任せます」

「さすが海斗。詳しい顧客情報は助かるよ」

咲さんの返事に続いて坂東さんもニヤリと頷く。

海斗は咲さんの肩甲骨をポンポンと叩く。

「指名被りは人気キャストの証しだからね。頑張って!」

「は、はい!」

そうして方針が決まり、咲さんは坂東さんの指示のもと、町田様の席から松原様という今月から本指名になった客の元へ移動していく。

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