闇夜に輝く
第36章 スノボ旅行
ニコリと可愛らしい笑顔を作りながらハッキリと意見を言うナナさん。
きっと相当頭がいいのだろうなぁと思わせる優れた洞察力に海斗は感心する。
「なるほどねー。めっちゃ勉強になるなぁ。毎日店にいるとどうしても客観的な視点って持てないから。それにナナさんが手伝ってくれた日はクリスマス営業だったから大変だったよね。あーゆー日こそもっとボーイがしっかりと役割を果たさなきゃならないし、普段出来てない部分が現れちゃうんだよなぁ。けど、その瞬間は自分も必死になっちゃってるからそこまで考えが及んでなかったかも」
「あ、私なんかすっごい上から目線になってますよね。すいません。たまにしか行かないのに」
「いやいや、たまにしか行かないから大事なんだって。店の空気に染まってないから適切な評価ができるわけだし。現にあの日は何とか乗り切って満足しちゃってたし。だからナナさんの意見はありがたいよ」
「海斗さんって不思議ですね。こういう話すると、頑張ってるんだけどねぇとか言い訳するだけの人が多いのに、耳が痛いなーって返されて真摯に受け止められたのは初めてです」
「だってさ、ナナさんが楽に働きたいからじゃなくて、店にとってプラスなのかマイナスなのかの話なんだもん。それにナナさんは店がどうなろうと関係ないはずなのに誤魔化さずに話してくれて嬉しいよ」
「あ、いえ。私にはわからない苦労や、海斗さんだけじゃどうにもできない事もあるはずなのにそれを言わないのが凄いなって思ったんです」
その言葉を言われた瞬間に海斗は確信した。
この子はキャバ嬢に向いている。
世の中には仕事のできる有能な女性は多い。そんな女性は自分の意見を嫌味なくハッキリ言う事が出来る。
けれど、相手の立場や環境、状況まで考えて発言する人は意外に少ない。
ナナさんはその両面を持ち合わせていた。