闇夜に輝く
第36章 スノボ旅行
そう言って一生懸命泣き止もうとする。
だけど、海斗の服で涙を拭いているため、海斗の服が引っ張られ、首が絞まって苦しい。
「そっか。よかった。俺も楽しかったよ」
「ほ、ほんと?」
「おう。最初若菜が滑れなくて俺が手を離そうとすると必死でしがみついてくるのとか、深雪にハマって身動き取れなくなってるのとか、見てて楽しかったよ」
「バカー!バカバカ!!」
「ははは。ってつねるなよ。ゴメンって」
「もう!ぶー!」
「お、ブタさんおかえり」
「ただいまぶー!おかえりぶー!」
「ははは。もう身体痛いから夕食はデリバリーのピザにしよう」
「え?ホントに?やったー!」
すっかり泣き止み嬉しそうな表情をする若菜に戻っていた。
夕食のピザを食べながら、向かいに座る若菜を見る。
海斗の中学時代のジャージを着て、ピザのチーズがどこまで伸びるかバカな挑戦をしている姿は子供っぽい。
だけど人知れず大人と子供の狭間で悩み苦しむ若菜がそこには確かにいる。
冷静に考えれば思春期や反抗期の真っ只中のはずなのにそんな甘えが許されないような生活を送らせてしまっている。
そして、何かが少しでも変わってしまうことへの敏感すぎる恐怖が若菜には常に存在している。
だけど、20歳の海斗にしてやれる事はごく限られている。
これから先若菜がどうなっていくのか漠然とした不安を持ちつつもひたすら見守るしかない海斗であった。
そうしてまた2年目の仕事がもうすぐ始まる。