闇夜に輝く
第36章 スノボ旅行
「ははは、でも山田君が若菜の事好きなのはわかるだろ?」
「知ってるよー。前に言われたもん。だけど今のところ私の理想はお兄ちゃんだからって言ったら、出直してきますだって」
「あはは、なんだよそれ。ちゃんと答えてやれよ」
「ちゃんと答えたよ。私を育ててくれますかって。実はモテるのに気づかないふりして私を大切にしてくれますかって。友達とか職場の人とかの前に私を連れてっても堂々としていられますかって。妹の前で平気でナンパが出来る図太い人ですかって。そしたら山田さんは言ってた。お兄ちゃんみたいに自信を持って仕事は出来ていないし、収入も少ないし女にももてない。私に優しくは出来ても遠慮のない接し方や教育はまだできないかもしれないって。だからちゃんと男を磨いて出直してきますって言われたんだもん」
「えーと、俺は別に大したことしてなくない?」
「いいの!お兄ちゃんが頑張ってるのも、無理してるのも、私の事を色々と考えてくれてるのも知ってる。私の人生をちゃんとしてくれたのはお兄ちゃんなの。私は行動でしか人の言うことなんて信じられないんだから!だからこのままがいいの!」
若菜は一気にそう言って突然静かになった。
すると微かにしゃくりあげるような泣き声がする。
海斗はうつ伏せのままその泣き声を静かに聞いていた。そして
「心配すんな。何も変わんないから」
すると若菜は海斗の背中に抱きついてまた泣いた。
「わがまま…言って…ごめんなさい。嫌いに…ならないで…」
「安心しろって。今さら好きも嫌いもないよ。大丈夫だって。1年過ぎたじゃん。いなくなったりしないよ。それよりスノボ楽しかったか?」
「うん…。楽しかった。ちゃんと滑れる様になった。学校でもどこかに行ったってウソをつかなくて済む。ありがとう」