闇夜に輝く
第39章 付け回し
そうして今度は坂東さんのほうを二人で見る。
ちょうど延長確認をしているところだったが、計算の苦手な坂東さんは汗をかきながら口を半開きにして指折り何かを数えている。きっとこの後、延長したらいくらになるか計算しているのだろう。
その姿からは、相良という男と対峙していたときのあの雰囲気がまったく感じられなかった。
「坂東さんって不思議ですね。普段はあんなに優しそうで、キャストにはおとぼけキャラで通ってるのに」
「まぁ、あいつも色々あったからなぁ」
「まぁ、あのガタイは只者じゃないですよね」
「その話も追々な。今はまだ営業中だ。このまま場内率をキープしてラストまでがんばってくれ」
「はい、あ、そろそろ、7番テーブルのキャストを替えてきます」
「よろしく!」
そして海斗が初めて丸一日付け回しを担当したその日は、可もなく不可もなく、通常通りの平日の売り上げで終わることが出来た。