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闇夜に輝く

第39章 付け回し


その姿を見送りながら、増田さんが海斗に声のトーンを抑えて聞く。

「ほんとに美香が場内入ると思って付けた?」

増田さんがいたずらっ子のような目で海斗を見る。

「いえ、あの時、忙しさのピークでマイナス接客に向いてる子をピックアップしただけなんすよね。ぶっちゃけ時間前にはミリオさんに替えて延長確認しようと思ってました」

海斗も同じように小声で答える。
すると増田さんがフッと鼻で笑った。

「だよなぁ、俺も華やかな感じか、アイドルっぽいのがいいのかと思ったんだけど、意外と家庭的な感じがヒットだったんだなぁ」

「席に着く前は美香さんだってマイナス接客に不満そうだったんですけどね。今は小走りで戻っていきましたね」

「ふっ、まぁ結果オーライならなんでもいいよ。ところでツカサとは連絡取れたか?」

その問いに海斗は力無く首を横に振る。

「何回か連絡したんですけど出ないですね。メールの返事もないです。留守電にはメッセージを残しておきましたが」

「そっか。飛んだかもな」

「可能性は大きいですよね」

そこで会話が止まってしまった。
二人は暫しフロアを見つめる。

「まぁ今は業務に集中してくれ。それから海斗の付回しなかなか良かったぞ。落ち着いてできていたな」

そう言って増田さんが話題を変えてきた。

「ありがとうございます。でも坂東さんの場内率ってやっぱりすごいですよ」

「あいつは感覚派だから付回しは上手いんだよ。俺もびっくりするようなキャストで場内をとるからな」

「見てて思います。その客にそのキャストつけるんすかぁって思ってたら場内入ってたりすることが多いです」

「これからは海斗もよくよく客を観察するように心がけろよ。少しずつ付回しの機会も増やしていくからな」

「はい。実は最近、坂東さんにも聞かれます。お前だったら誰つける?って。でも俺と坂東さんの考えが合致する割合は7割ってところですかね」

「まぁ、そのくらい合致してるんならいいんじゃないか?残りの何割かは付回しのセンスや直感でその付回しの色が出るからなぁ。パターン化されすぎた付回しはキャストもまたかぁってなるしな」


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