闇夜に輝く
第40章 後始末
海斗は特に担当としてその現状を把握しきれていなかった責任は大きいと感じた。
「普段からツカサさんの行動が危ういのを放置していたのは俺です。手遅れになってからじゃ悔しさしか残らない事もわかりました。もうこんなクソみたいな思いをしない為にもこれから俺に出来ることを考えていきます」
「その気持ちを忘れるなよ。それから殴って悪かったな。坂東、氷を持ってきてやれ」
「はい」
サッと立ち上がりVIP席を出ようとする坂東さんを海斗が止める。
「いえ、大丈夫です。この痛みもしっかり刻み込みます。それに今まで増田さんが俺に対して理不尽な暴力を振るった事はありませんでした。何か意図があったんだと思ってます」
海斗は痛みの走る身体に耐えて、背筋を伸ばして見つめると、増田さんはニヤリと笑う。
「海斗がどう出るか見たかったんだ。逃げるのか歯向かうのかビビるのか。心の強さを見たかったんだ。試すような真似をしてすまん。本当に殴り返してもいいんだぞ。その覚悟で殴ったんだ」
「はい。店を守ると言った言葉が嘘だった時には思いっきり殴らせてもらいます」
「おう、その時は目の覚めるようなヤツを頼むな」
そう言って屈託無く笑う増田さんを見て、海斗は背負っているものの違いを感じた。
そしてもっと人間的な強さを持たなければならないことも。
それを促すのは仕事であり、立場であり、世の中を知れば知るほどそういった経験を積まないと、この人と同じ土俵には立てないということを痛感していた。
それと同時に、今の海斗ではツカサさんを助けてやれない自分への不甲斐なさ、守るべきものすら守れない判断の甘さ。
そしてこの業界で生きていく覚悟。
中途半端な自分への戒めとして身体の痛みと共に深く刻み込むこととなった。