闇夜に輝く
第40章 後始末
けれど、増田さんからは返ってきたのは非情なまでの答え。
「可哀想なのはわかるが、相良と関わってしまったのが運のツキだ。でも、他の街へ行けば何とかなる。俺ら黒服と違ってこの店がツカサの全てじゃない。俺らはあいつの親じゃないからなぁ。守れる範囲でしか出来ることはないんだよ」
誤魔化す事なくまっすぐ海斗を見る増田さんの目からは、何の感情も読み取れなかった。
何人もの人間がこの夜の闇にのまれて消えていく。
そんな繰り返しをずっと目の当たりにし続けてきた夜の住人の寂しい目がそこにあった。
海斗は、全身を襲う無力感に思わずため息がでる。
「これから先、ウチのキャストが不良やヤクザに関わらない様にするにはどうすればいいんですかね」
ポツリと独り言のように呟く。
増田さんは少しだけ考えた後、
「まぁ、そんなヤカラが好きな女は一定数いる。だから全部を守れるわけではない。それから、ああいった連中は臭覚が鋭い。女心の隙間につけ込むのもうまい。女はそういった連中の刺激的な生活に惹かれたり、金に釣られて付き合ってしまったり。そして気付けばそこから逃げられなくなるパターンもある」
その言葉を聞いて海斗は思い出す。
ツカサさんはガードが甘い分、下品な客の接客の頻度が高かった。
中にはグレーゾーンな仕事に就いていると思われる客も少なからずいた。
また店側も他のキャストが怖がる客の相手をツカサさんに都合よく任せてしまっている部分もあったのだ。
だけどツカサさん自身にそういう客に対する警戒心が低い様にも見受けられた。
更に言えば、そういう男の知り合いが多い事を他のキャストに見せつける事で自分を守っている節もあった。
結果的に、ツカサさんを都合よく使い潰したのは自分達なのかもしれない。