闇夜に輝く
第42章 お好み焼き
30分程経ち、結衣菜さんはバイトの時間が終わったらしく、私服に着替えて席に来た。
「おー、お疲れー。頑張ってたなぁ、見直したよ」
「疲れたぁ。ホントですかぁ?にししし、結衣菜はやればできる子ですから」
ピースをしながら海斗の隣に座る結衣菜さん。
「好きなもの頼んでね」
「はーい。あ、あと海斗さんにお願いがあるんですけどぉ」
「どうした?」
結衣菜さんは周りを伺い、少し小さな声で、
「ごめんなさい。お店の人に海斗さんの事、結衣菜の彼氏って言っちゃいました。実は最近、バイトの先輩にしつこく言い寄られて困ってるんですよぉ」
口をへの字に曲げて上目遣いでお願いされた。
海斗は笑いながら、
「それでかぁ。さっきから色々な店員と目が合うなぁと思ってたんだよね。いいよ、いいよ。好きなだけ使ってくれ。つーか、その先輩にも普段からそんな可愛く色々とお願いしてるんでしょう?あんまり男を勘違いさせちゃダメだよ」
「そんなことないですよぉ〜。でも、海斗さん人気ですよ。みんながカッコいいって言ってます」
「ほらまたそーやってすぐ男を勘違いさせるんだよなぁ。さすがは元キャバ嬢だな」
「えー?だってそんな赤紫のスキニーパンツをカッコよく履きこなす人、あんまりいないですよ」
「おいおい赤紫て。ボルドーな。せめてワインレッドって言ってくれよ。なんか赤紫ってめっちゃダサそうじゃんか」
「ボルドー?そう、それ!結衣菜、言葉知らなくてぇ。でもボルドーなんて聞いたことないですよ〜」
「何でよ。うちの店にその名前の赤ワインボトルあったじゃん。結衣菜さんだって頼んでたし」
「そうだっけ?もう忘れちゃった〜」
海斗と結衣菜さんのやりとりを向かい側で見ていた若菜がクスクス笑っている。