闇夜に輝く
第42章 お好み焼き
夕方、海斗は若菜と二人で家を出る。
冬の寒空の中、最寄りの駅まで歩き、駅構内を抜けて反対口へ出た。
海斗はあまりこちら側へは来た事が無かったが、若菜は安いスーパーがあるのでよく来ているようだった。
お陰で目的のお好み焼き屋にもスムーズにたどり着けた。
店内に入ると、日曜日な事もあり家族連れがかなりの組数来店していた。
「いらっしゃいませー」
元気の良い店員に予約の名前を伝えると、そのまま少し待たされる。
しばらくすると結衣菜さんが満面の笑みでやってきた。
「いらっしゃいませー。あっ、若菜ちゃん久しぶりぃ。あ、えーと、ドゾ、ご案内します」
久しぶりの若菜との対面にテンションが上がってしまった結衣菜さんだったが、周りのお客さんの目を気にしてすぐにぎこちない敬語になった。
海斗達は笑いを噛み殺しながら靴を脱ぎ、席へと着いていく。
案内された席は店の一番奥の座敷で、掘りごたつのような形状になっていた。
ドリンクとお好み焼、もんじゃ焼き、魚介類の鉄板焼きなどを一通り頼む。
すると結衣菜さんが茶目っ気のあるウインクとともに
「お持ちしますので少々お待ちくださぁい」
と言いながら去っていく。
それを見た若菜が、
「結衣菜さんの店員さんのユニホーム姿めっちゃ可愛いねー」
と目をキラキラさせてはしゃいでいる。
確かに、他の店員とは華やかさが違う。
ニューアクトレスでトップクラスとまではいかなかったが、さすがは元Bランクキャスト。
それにお茶目で明るいキャラが店の雰囲気によく合っている。
案の定、遠くの客席でオーダーを取っているだけなのになぜかお客さんと結衣菜さんの笑い声が聞こえてくる。
その後もテーブルの片付けをしたり、品物を運んだりと、意外にもテキパキと働く結衣菜さん。
でも、テーブルを拭く時にかつお節をめっちゃ床に落としてたり、手に付いたソースを舐めちゃったり、遠くから海斗に向かってピースしたり、屈んだ拍子にジーンズの腰からピンクのパンツが見えちゃってたりと、若干のテキトーさも相変わらず健在だったが。
若菜と二人でお好み焼を焼いていると、色々な店員がチラチラとこっちを見てくる。
少し気になりながらも、若菜と取り留めのない話をしながら久しぶりの外食を楽しんでいた。