闇夜に輝く
第45章 闇夜に輝く夜の蝶
その後、改めて、社長、専務、常務にも挨拶をすると、増田さんがまた声をかけた。
「筑波は業務がありますので、今日はこのくらいで…、よろしいでしょうか」
増田さんが細心の注意を払いながらお願いをする。
「おお、増田くん済まなかった。いや、社長と飲んでたらどうしても筑波くんを見てみたくなってなぁ。こんな時間に悪い事をしたね」
橋本組長は笑顔で増田さんに軽く詫びる。
しかし、その言葉で後ろに控えていたボディーガードの雰囲気が変わる。
一瞬、増田さんと社長達が狼狽しかけた。
しかし、すかさず理子さんの横ヤリが入る。
「おじさまは、私に会いに来てくれたんじゃないんですかぁ?でもごめんね、お店には入れてあげれないの。お店が終わったら合流するから待っててね」
理子さんが抱きつきながら優しく諭すと、橋本組長は目尻を下げて理子さんの背中をさする。
「分かった、分かった。お前に迷惑をかけたら後が怖いからなぁ。もう行くよ。また後でな。あと、優矢、お前はちょっと付き合え」
理子さんのおかげでその場が一気に和むのが感じ取れた。
優矢くんも緊張感のない声で、
「はーい。兄貴、ちょっと行ってくる」
と増田さんに告げると、親しげに橋本組長をエスコートしながらエレベーターホールへ移動し始めた。
慌てて増田さんが声をかける。
「優矢、皆さんに失礼のないようにな。橋本さん、後藤さん、わざわざ足を運んでいただいたのに申し訳ありません」
「おう、気にすんな。立派にやってるじゃねーか。これじゃぁ流行る訳だ。ガハハ」
最後は貫禄たっぷりに大股で帰っていった。