闇夜に輝く
第45章 闇夜に輝く夜の蝶
エントランスには、増田さん、優矢君、そして社長、専務、常務。
それに加えて二人のやたらと雰囲気のある男性。
一人は見たことがない恰幅の良い60代の男性。
もう一人は小柄な50過ぎの男性。こちらはどこかで見覚えがあった。
その後ろに3人のボディーガードが控えていた。
海斗は増田さんの斜め後ろに立ち、頭を下げて挨拶をする。
「お疲れ様です。理子さんをお連れしました」
すると理子さんが恰幅の良い60代の男性に駆け寄り、親しげに抱きつく。
海斗がその様子を見ていると、増田さんに呼ばれた。
「筑波、紹介するから前に来い。こちらが橋本さんで、こちらが後藤さん。これがウチの筑波海斗です」
海斗は前に出て頭を下げると、橋本という恰幅の良い男性から右手を差し出される。
それをしっかりと握り返し、
「筑波海斗と申します。よろしくお願いします」
と言い、顔を上げるとその男性と目が合った。
ほんの数瞬、そのまま向き合う。
すると男性はにこやかに社長に向かって、
「中々、いい面構えじゃないか。どこから引っ張ってきたんだ?」
「いやいや、拾い物ですよ」
少しおどけた笑顔で答える社長。
海斗は社長のこんな笑顔を初めて見た。
続けて後藤さんと呼ばれた小柄な人とも挨拶をする。
海斗はその時に夏のバーベキューの時に甚平を着て伊勢海老を届けにきた人だと気が付いた。
「お久しぶりです。筑波海斗です」
「君が海斗くんか。優矢から話は聞いてるぞ。頑張ってな」
後藤さんはとても気さくな感じで、海斗の肩をポンポンと叩く。
「ありがとうございます。頑張ります」
優矢君から何の話を聞いたのかは少し気になったが、何かを聞くような雰囲気ではなかった。