闇夜に輝く
第48章 エースとして
海斗が主任となって2ヶ月あまりが経過し6月となった。
理子さんが居なくなった影響は大きく、売上も伸びていない。
前年の同月の売上をかろうじてキープするのが精一杯の状況。
しかし、前年は夏頃から急激に売上を伸ばし始めた為、このままでは前年の成績を下回らないようにするのは難しい。
4月から付け回しを全面的に任されるようになった海斗も若干の焦りを感じ始めていた。
さらに各担当キャストの成績に関しても課題が山積み。
そして日々の出勤キャストの調整。
人数を揃えれば良いわけではなく、AランクBランク、C、Dランクのキャストをバランスよく出勤させる様に調整する。
改めて坂東さんの手腕を尊敬する海斗。
付け回しの際に、キャストに指示や要求だけではキャストは不機嫌になる。
思えば坂東さんは席に付ける前に必ず、仕事とは関係のない世間話を挟んでいた。
「今日のヘアメイク似合ってるじゃん」
「そのドレス新しくない?」
「あれ?痩せた?」
「色っぽい香りするなぁ」
「そのネイルってどのくらいの時間かかるの?」
と言ったキャストを褒める言葉や、
「ワンちゃん元気?」
「あの番組見た?」
「ちょっと西野を見てみ。あいつ微妙に寝癖が直ってない」
「実は俺、今日はミッキーの勝負パンツ履いてきたんだけど、どう思う?」
「ヤバい、ココ壱のカレー食べ過ぎて気持ち悪りぃ」
など、何でもない話をしてから、本題に入る。その自然さが坂東さんは上手かった。