闇夜に輝く
第48章 エースとして
海斗はこの様なトラブルを根気よく解決し続ける日々を送る中で、自分の役割を再認識していた。
海斗の主業務は付け回しであり、店の売上を大きく左右する。
でも、海斗の役職は別の意味合いも持つ。
決して海斗一人が店を回しているわけではない。
杏奈さんや、山田君だって日々悩んでいる。
ボーイ、キャスト全員がこの店の全体像を作り上げる。海斗もその一部分でしかない。
その中で、海斗の言動、考え、積み重ねた経験が周りに伝わり、その働きが広がっていく。それはじっくりと確実に。
海斗はその広がっていく輪の色を決める存在なのだ。
だからこそ、自覚を持って日々の業務に取り組まなければならない。
焦ってもしょうがない。着実に店の質を上げていくのには時間がかかる。
客が満足するかはキャストに頼る部分も大きい。
なので、そのキャストがより魅力的に映るようにする事や、客にとって居心地の良い店、キャストがこの店だからこそ成績を上げたいと思わせる様にする為にどうすれば良いか。
それが増田さんから言われた言葉。
『エースとしての自覚』
なのかもしれない。
海斗の中で徐々に目標がシフトしていった。
それは一部のキャストに頼った上で成り立つ売上の良い店ではなく、季節やキャストに左右されない強い店にする。
それが幻想であったとしても、そこに近づくにはどうすべきか、海斗はこの問題に全力を傾けることとなった。