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闇夜に輝く

第48章 エースとして




黙って聞いていた山田君は大きなため息とともに天を仰いだ。
そして困った様な笑顔を見せて海斗に向き合うと、

「はぁ。海斗さんが頼りにされる理由がわかりました。僕はまだまだですね。瞬時にそれを判断して変えていく巧みな話術が思いつきません。秋山さんが言ってました。海斗さんは売れっ子キャストを沢山抱えて管理手当も入るから羨ましいって。実は僕もそう思ってました。けど、実際に担当を持ってわかりました。売上を伸ばすどころか出勤確保すら大変で、一筋縄ではいかない。キャストだって一生懸命頑張っているのになかなか成績が上がらない。僕はその相談すらされません。海斗さんを見てるとキャスト管理って簡単な事のように見えますが全然違いました。でもそれは海斗さんがキャストのことをトコトン観察してどう接すれば心を開いてくれるのか常に考えているからなんですよねぇ」

また大きなため息と共に山田君は両手で顔を覆う。
海斗は山田君の背中ををポンと叩く。

「俺だって最初から出来た訳じゃないよ。それに特別話術が優れてる訳でもない。だから上手くいかないこともある。キャストと衝突することだってあるよ。だけど、それを怖がって何もしなかったり、ご機嫌を取るだけだったらキャストの出勤率や成績は上がらない。毎日悩んで、日々積み上げていくしかない。焦ることはないよ。増田さんをはじめとして頼りになる人はたくさんいるから」

海斗がそう言って励ますと、山田君は大きく深呼吸をした。

「はい。もう一度、ミリオさんと真正面から向き合ってみようと思います」

その後、山田君は悩みながらも、ミリオさんの担当として良好な関係を築いていくこととなる。
そして、ミリオさんという扱いの難しいキャストを管理する事で山田君にも少しづつ自信を植え付ける事にもなっていく。



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