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闇夜に輝く

第49章 衝突



この街にクラブニューアクトレスという店が開店して8年。
変革の時期を迎えていた。
それまでの評価は街で一番活気があり、流行っている店。
最近はそれに加えて街一番の高級店としての位置付けに成りつつあった。
今までこの街の高級店と言えばレッドローズ。
しかし今や、店の雰囲気、キャストの質や意識はニューアクトレスの方が良いという空気が流れ始める。

それに伴い客層も徐々に変わり始めていた。
下品な客、怪しい仕事をしていると思われる風貌の客が極端に減っていった。

そしてその煽りをモロに喰ったのが結衣菜さんだった。
基本的にバカ騒ぎしか出来ない接客スキルでは段々と浮いた存在に成りつつあった。

華やかさとバカ騒ぎは違う。
それは仕草、言葉遣い、笑い方、声の大きさ、姿勢。
同じような盛り上がり方や弾け方をしても、上品さや女らしさ、色気を含んだ接客を醸し出す事が出来るか。
大学生サークルが居酒屋で飲み会をしているようなガキっぽい接客しかできなければ、ニューアクトレスの客層の店では自ずと指名客は減る。

しかし、同じ様なキャラの杏奈さんがトップ争いを繰り広げているのに結衣菜さんはランク外。それはなぜか。
実は杏奈さんには特技がある。それは客に対して、男同士の先輩、後輩に似たような関係性を構築するのが上手い。なので多少色気が足りなくても、その席の一番の年長者に対して可愛げのある後輩ポジションをガッチリと掴み取る。それに加えてピンでの接客の際は色気のある接客も身につけた。なので、友達営業と色恋営業のバランスが良く、生活感のない30代〜40代の独身男性を中心に指名客を伸ばしていた。

杏奈さんと結衣菜さんはほんの1年前までは差はほとんど無かった。
しかし結衣菜さんが仕事から離れている僅か数ヶ月の間に杏奈さんがキャバ嬢として急成長してしまった。

海斗も結衣菜さんのもどかしい心情には気づいていたものの、ナンバー入りするキャストを優先しなければならないため、結衣菜さんが再入店してからしっかりとミーティングをする時間が取れないでいた。

2ヶ月が経ち、結衣菜さんは成績が伸びないジレンマからか、出勤態度が徐々に悪くなっていた。


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