闇夜に輝く
第49章 衝突
坂東さんは結衣菜さんをL字型の小さめのVIP席の奥側に座らせると、そのままどこかへ行ってしまった。
海斗と結衣菜さんは気不味い雰囲気のまま斜め向かいに座り話し始める。
「結衣菜さん、お疲れ様」
「……うるさいなぁ。タバコ返してよ」
そのまま何も話さない結衣菜さん。
不穏な空気が流れるのを感じながら海斗はゆっくりと話す。
「結衣菜さん?今日の態度がどういう事かわかってるよね」
「何なの?別にいいじゃん!裏で電話してたのだってお客さんとの営業電話だし!」
「ふざけるな!!」
「ひぃッ!?」
海斗の怒声にビックリする結衣菜さん。
それに構わず海斗が話す。
「営業だと?どこの世界に顧客に対してくわえタバコで電話する社会人がいるんだよ!くだらねぇ言い訳すんな!ココは学校じゃないんだぞ!学校だったら金払ってるんだから授業を受ける受けないも自由だよ。でもな、ここは職場なんだぞ。てめーは金を貰う立場だろうが!なに甘えたこと言ってんだ!」
海斗は睨みつけたまま、結衣菜さんの反論を待つ。しかし、さっきまでの不貞腐れた態度は影を潜め、シュンとしてしまった。そして一言、
「……、もう無理…もう…、…辞めます」
結衣菜さんはそれっきり無言になってしまった。海斗はため息をつき、声のトーンを落とす。
「何だよ。結衣菜の気持ちはそんなもんだったのか。辞めるって言えば優しくなるとでも思ったんか?結衣菜が増田さんに恩返しをしたいって言葉は嘘かよ」
「だって……」
ポロポロと涙を零す結衣菜さん。