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闇夜に輝く

第49章 衝突



海斗は気にせず言葉を続ける。

「結衣菜はまだ復帰したばかりだから成績なんて焦らなくていいんだよ。だけどな、出勤態度や営業中の態度はちゃんとできるだろう。俺は結衣菜の成績の事だって考えてる。でもな、その気構えの見えない奴を優先して気にかけてあげる事は出来ない、わかるよな」

「だって……」

無言で海斗の肩を猫パンチする。
海斗は何もせず、何も聞かずに結衣菜さんを見つめる。
結衣菜さんは下を向いたまま、何度も海斗の肩を叩き続けながら、

「だって、前に結衣菜がいた時と店の雰囲気も、みんなも全然違うんだもん。海斗さんだって結衣菜が店を離れてるときは結衣菜の事を気にかけてくれる優しいお兄ちゃんだったのに、今は気安く近付けないし、話せないし、厳しいし」

そうして力無く叩き続けていた猫パンチを止め、下唇を突き出し泣き続ける。
海斗は諭すように話しかける。

「いいか結衣菜。もう子供じゃないんだよ。反発したり不貞腐れたりしても根気よく接してくれる学校の先生や親はココにはいないんだ。他のキャストも表面的には同意しつつも、同じような行動を共にしてくれるようなガキはいない。確かにこの数ヶ月で店の雰囲気や街での評価は全く違うものになってる。俺だって、前に結衣菜と会っていた時とは違って、仕事中なんだよ。結衣菜が戸惑う部分もわかる。だけど上手くいかない気持ちをわかってもらうためや、それを隠すためにヤル気のない態度をしたり、困らせようとするのはもうやめなさい。結果が出てなくてもいいんだよ。確かにこの業界は結果が全てだけど、結果を出すためにちゃんと前に進んでるのかを自分で考えないと。結衣菜はもう、自分の人生の責任は自分で決める歳になったんだよ」

海斗が優しく結衣菜さんの頭を撫でる。


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