闇夜に輝く
第49章 衝突
海斗の言葉に結衣菜さんは考え込む。
眉毛を下げた困り顔で下唇を突き出したまま、チラっと海斗を見ては視線を外す。
またチラっと見ては下を向く。
海斗は一切視線を外さず、結衣菜さんの言葉を待つ。
しばらくして結衣菜さんからか細い声が発せられた。
「ふぃぃ〜。わかったぁ。褒められたいから頑張る」
「そっか。ありがとう」
海斗がにこやかにお礼を言う。
結衣菜さんは照れたようにはにかんだ。
そして安心した表情で、
「でもさっきまでの海斗さん、めっちゃ怖かった。あのね、怒られたときね、おしっこがね、ちょっと出た……」
なぜか笑顔でそう報告する結衣菜さん。
「はぁ〜、今言うかソレ。しかも何でちょっと嬉しそうなんだよ」
「にゃははは。結衣菜のパンツがヤバい事になってるぅ」
呆れる海斗の表情を見てますます元気になる結衣菜さん。
「もー、いつも言ってんじゃん。俺をあんまり困らせないでくれって」
「ごめんなさーい。あ、あとね、本当はタバコ取り上げられた時もちょっと漏らしたの。だって無言で火の点いたタバコを素手で揉み消すなんて、普通に怒られるより何倍も怖かったもん」
「あー、まぁ違うやり方もあったかもな。無駄に怖がらせてゴメンね。でも無理矢理に言うことを聞かせたい訳じゃないんだ。ただ、このままじゃ結衣菜さんの居場所がどんどんなくなっちゃうと思って。せっかく戻ってきてくれたんだし、この業界で輝けると確信してる。だからこそ厳しい事も言う。嫌われるのも覚悟してるよ」