闇夜に輝く
第49章 衝突
海斗はなんとも言えない脱力感を覚える。
その姿を見た増田さんがさらに笑う。
「あー可笑しい。でも海斗も凄いぞ。結衣菜は小さい頃から怒られ慣れてるからな。大人の矛盾やスキをつくのが上手い。それを威圧感と論理の両方で丸め込んだんだからなぁ。今の結衣菜は海斗への畏怖と尊敬が行き過ぎて恋に変わってるんだよ」
「えーと、結衣菜さんからは恋愛感情とかは感じないんですけどね。俺が鈍感すぎるんですか?」
「だから海斗の色管理は強烈だって言ってるんだ。あれは恋愛感情じゃない。海斗のファンに近いかもな。だから海斗に彼女がいようが関係ない。他のキャストが海斗を褒めると嬉しくなる。逆に他のキャストが海斗への文句を言っても、あいつは全力で擁護するだろうなぁ」
「あー、元々個性的だった結衣菜さんが最近さらに凄いのはそのせいなんですね。まぁ勤務態度も改善できたし、接客の幅も広がりつつあるんでとりあえずこのままの感じでいきます。あーでも、他のキャストに勘違いされると面倒くさそうですね」
「フッ。お前もだんだん優矢に似てきたな。普通は女にそこまで想われたら、困った振りをしながらも少しはニヤニヤするもんなんだぞ。優矢とは女へのアプローチの仕方は全然違うが、根っこは一緒だな。俺も最初は気づかなかったけど、優矢は海斗の本質に最初から気づいてたんだなぁ。あいつが海斗を大好きな理由が俺にも最近分かってきたよ。もし、俺が二十歳くらいの時に同世代に優矢と海斗がいたらと思うと俺の自信が揺らぎそうだ。ホントにお前らより先に産まれてて良かったわ」
増田さんはそう言って、チラリと後ろの山田君を見る。
いつの間にか近くでじっと話を聞いていた山田君が大きなため息と共に店内掃除を再開した。