テキストサイズ

闇夜に輝く

第50章 パトロン



しかし海斗は最近までこの二人は似た者同士だと勘違いしていた。

きっと杏奈さんは学生時代、同学年の人から恐れられるような存在。
少しヤンキー気質な面がある。
なので意外と上下関係に敏感で律儀だったり、礼儀正しかったりする。
また、計算高く、危険察知能力に優れ、他のキャストに嫌われないように無言の威圧感とあからさまな懐柔策とを上手く使い分ける。
なので年上キャストには可愛がられ、同年代や年下キャストには一目置かれる。
指名客に対してもプライベートで飲みに来ている時はいい加減で男勝りな面を出し、接待や仕事で飲みに来ている時はおしとやかで男を立てる面をしっかりと使い分ける。
そしてそのギャップに指名客は心を奪われる。


それに対し、結衣菜さんはちょっとおバカなクラスの人気者といった存在。
その言動に計算や打算が感じられない。
なので接客中とバックヤードで差があまりない。
欠点はイヤな客やイヤな事を言われるとすぐに顔に出てしまうところだが、それも最近は可愛げを残したまま、その表情が出来るようになった。
キャストとも年やキャリアに関係なくフランクに接している。
中にはその姿をよく思っていないキャストもいるが、遠回しにイヤミを言われてもそれに気付かない。

海斗はある日、キャスト同士のこんな会話を耳にした。

「最近結衣菜ちゃんって出勤が早いね〜。私なんて忙しくていっつもギリギリになっちゃうのに」

「はい!結衣菜ってめっちゃヒマなんです。だっておうちではテレビ見てるだけですもん」

「そ、そうなんだ。なんか悩みとか無さそうで羨ましい」

「にししし、褒められちった。あと、悩んだ時は一人カラオケ行ったらだいたい忘れます。おすすめですよ」

「はぁ。ありがと。考えとくね」

海斗は聞こえないふりをしていたが、笑いを堪えるのに苦労した。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ