闇夜に輝く
第50章 パトロン
笑いをこらえる海斗に気付いた結衣菜さんはちょっとご機嫌ナナメな表情を浮かる。
「あ〜、なんか楽しんでるでしょ?ホントに結衣菜は困ってるんだよ?だって親子になってって言われてもさぁ…」
「いや、生命保険を貢がれるキャバ嬢とか面白いに決まってるじゃん。マンションや車とかならよくある話だけどさ。ジュエリーや車のカタログじゃなくて、養子縁組の紙とか生命保険の契約書とかを並べられるなんて、やっぱり結衣菜は他のキャストとは違う何かを持っているんだよ。これからは山口様が来店したら、結衣菜さんのお父様と呼んだ方が喜ばれるのかな」
「やっぱりからかってる!もう!山口さんは本当にお父さん気分でいるから結構面倒くさいんたよ?彼氏が出来たら紹介しなさいとか、お酒を飲みすぎるんじゃないとか」
「あはは、ゴメンゴメン。でもこれは保険契約書だし、本当の親子になる訳じゃないから大丈夫だよ」
「え、そうなの?なら安心した〜。じゃぁこの紙に書くの手伝ってよ〜。読めない漢字が多すぎて何が書いてあるのかさっぱり分からないけど、これ書くとマンションに住めるようになるんでしょ?」
「は?いやだからこれは生命保険契約書だって」
「ふんふん。なるほどね。で、せーめーほけんけいやくしょって何のこと?」
海斗は大きなため息と共に、今までの話が半分も伝わっていないことに頭を抱えた。
どうやら、この書類を賃貸契約書だと思っていたらしい。
さらに生命保険の存在自体も知らなかったので、もう一度わかりやすく丁寧に説明して、やっと理解してくれた。
けれど結衣菜さんは保険金についてはさほど興味がないようで、それよりも家の賃貸契約書ではない事にガッカリしていた。