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闇夜に輝く

第50章 パトロン



海斗はペラペラとその冊子を見て内容を確認していくが、思わず手が止まる。

「え?これって…、生命保険じゃない?」

「へー、よく知らない。なんか、うけとりにん?のところに名前書いとけって言われたよ?」

「ちょ、ちょっと待て。これ5000万円の保険契約じゃん。マジかよ」

「ふーん、そうなんだ。結衣菜ね、本当のパパがいないから寂しいって言ったら、山口さんが俺のことを父親と思ってくれていいからなって。最初は本気で養子になってくれって言われたの。でもママの子供じゃなくなるのはイヤって言ったらこれを渡されたの。山口さんね、これを渡しながら言ってた。独身だし親戚とも仲が悪いからあんまりお金を残したくないんだって。派手に遊ぶのもそれが理由だって言ってたよ?」

「だからって……。はぁ、結衣菜はいつも予想の斜め上をいくなぁ。愛人契約じゃなくて親子契約かよ。まぁ、結衣菜をただの夜の女のように扱っていないと伝える意味でこういう提案をしたんだろうな。うーん、関係がこじれればむこうも勝手に保険を解約するんだろうし、名前書いちゃえば?どうせ今すぐもらえる金じゃないんだし、それを盾にわがままを言ってきたら解約してって言えばいいだけだし。でも十数年後、忘れた頃に大金が入ったらめっちゃオモロイな」

海斗は呆れを通り越して笑えてきてしまった。
年配の客をターゲットにしろとアドバイスをしたが、ここまでするとは思わなかった。
しかもその重大さにあまり気付いていない結衣菜さんの様子が尚更可笑しかった。


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