闇夜に輝く
第51章 黒服として
7月のボーナス期を過ぎ8月に入ってもニューアクトレスは着実に売上を伸ばしていた。
気付けば昨年と同程度の売上をだしている。
しかし、その営業内容は昨年とは違う。
平均客単価は昨年よりも若干下がった。
これは3月まで在籍していた理子さんの指名客の客単価が桁違いに高かった為である。
だが、今は理子さんのような突き抜けたキャストはいないが、Aランクキャストが10人を超えてくる月が増え、それに伴い客数、組数が増えていた。
お陰で、店は大忙し。
ピンのフリー客は平日の限られた時間しか入店できない。
そういった評判はさらに客を呼ぶ。
新規客の割合が昨年よりも増えている。
よって同じ売上でも利益率が昨年よりも高くなっていた。
毎年恒例のバーベキューも終了した8月下旬の営業終了後、片付けをしているボーイ達。
海斗もカウンター内で洗い物をしていた。
ラストまで勤務していたキャスト達が日払いをもらい次々と帰っていく。
そんな中、サラさんと増田店長がカウンター席に座り、話をしていた。
「増田さん、来週のパーティって来てくれますか?」
「あー、ごめんなぁ。その日は用事があっていけないんだ。あ、そうだ、海斗に一緒に行ってもらえばいいんじゃないか?」
急に自分の名前が呼ばれ海斗は手を止める。
サラさんも一瞬海斗の方を見るが、少し困ったような顔でまた増田さんに話をする。
「えー?んーと、そのパーティって若手社長とかが多いから、出来れば増田さんに来て欲しかったなぁ。どうしてもダメ?」
「すまんなぁ。どうしても外せない用事なんだよ。もし時間が空けば付き合ってやれるんだけどな」
「あーあ。残念。増田さんの車にも乗りたかったなぁ。でもしょーがないかぁ。時間空いたら教えてくださいね」
「わかった、わかった。ほら、送りの車が待ってるぞ」
「はーい。おつかれさまでしたぁ」
そう言ってサラさんは残念そうに帰っていった。