闇夜に輝く
第52章 捜査
そんな事を考えながらも聞かれた事に淡々と受け答えをしていた。
するとこの件の核心に迫る事を聞かれた。
「相良という人物をご存知ですか?」
「……相良ですか?知りませんが」
海斗が発した相良という言葉に坂東さんの顔が険しくなる。
海斗は坂東さんに軽く頷きながら刑事の話の続きを聞く。
「あれ?おかしいですね。相良はツカサという女性の指名客との情報が上がってますが」
「なにぶん、ツカサはだいぶ前に辞めた従業員ですし、何があったのかもう少しお話ししていただかなければ、こちらとしても話せる内容は限られてしまいます」
「そうですか。しかし、捜査情報は機密事項ですのでその辺もご考慮下さい。あのー、もう少し詳しく話していただけないでしょうか?でないと強制捜査の令状を持って伺う事も検討せねばなりませんが…」
こいつらは本当に汚い。
令状を印籠のように振りかざす。
が、その面倒くささは一定の効果を発揮する。
それでも海斗は食い下がる。
「令状は勘弁してくださいよ。私どもは庇ったり、隠し事をしている訳ではありません。ただ、商売柄キャストのプライベートな情報の漏洩に細心の注意を払わなければならないのをご理解下さい。ストーカー被害などの事を考えると、そう軽々しくお教えは出来ないんですよ。ストーカーの加害者が警察官って可能性もありますし。捜査協力の名の下にツカサの個人情報をお教えして、それがそういった事件に繋がるとも限りません。それに水商売の女性が警察にストーカー被害の相談をしても、男を騙すような商売をしているから当たり前だと言ってまともに取り合ってくれないことも多いんですよ。なのでキャストのトラブルを未然に防ぐ努力を怠る訳にはいきません。それがたとえ警察官を名乗る人物だったとしてもです」
「ん〜、なるほど。ではこれだけでも教えていただけないでしょうか。ツカサという女性が相良と知り合ったのはこの店がキッカケだと言っているのですが、その事実はどうなんでしょうか?」
「だから何とも言えませんって。重大な事件の捜査協力だとちゃんと分かれば一般市民の立場として協力もできますが、今のままだと事件の捜査なのか刑事さんの個人的な要望なのかわかりませんよ」
「そうですか…。ちょっとお待ちください」
刑事はそういった後、受話器越しに何やら他の人と相談しているようだった。