闇夜に輝く
第53章 色管理
9月最初の日曜日の夕方。
海斗は優矢君から借りたBMWに乗り、渋谷へ向かう。
待ち合わせ場所に到着すると出会った当時とは全く違うサラさんがそこにはいた。
一言で表すなら「ゴージャス」。まさに「ゴージャス」
キラキラメイクに、巻き髪。高そうなアクセサリーに高いヒール。
布をそんなに使っていないのに絶対高いであろうセクシーな服。
店では際立って目立つ存在ではないサラさんだが、街中では違っていた。
正直、そのまま帰ろうかと思う海斗。
気を取り直し大きく一息つくと、軽くクラクションを鳴らしてサラさんを呼ぶ。
サラさんはツカツカと近づき、ガラス越しに海斗を確認し、車に乗り込んできた。
甘い香水の香りが一気に車に拡がる。
助手席のドアを閉めたサラさんに、開口一番文句を言われた。
「ちょっとー、遅いじゃん。めっちゃナンパされたんですけど」
「あ、ごめん、ほら、あれだ。見とれてたんだよ、うん」
「あのねー、お世辞でも、もうちょっと本当っぽく言ってくれません?」
「いや本当だって。サラさんの近くにいた、アフロの奴。スゲーなぁって思って…」
「ちょ、そっち?確かに私もちょっと思ったけど」
「だろ。絶対、あの頭ん中でハムスター飼ってるよ」
「あはは、ありえるー。ってナイから!」
「そうかなぁ…。あっ!」
「???」
「おはよー、サラさん」
「遅っ!」
馬鹿な話をしながらレストランに向かった。