闇夜に輝く
第54章 勘違い客
さらにもう一つの問題も起きていた。
それはキャストの二極化。
売れっ子キャスト達とそうでないキャスト達の差が以前より格段に明確になってしまっていた。
店のキャパシティ以上には客は入れない。
よって本指名客が優先的に入店することとなる。
フリーの客も上位ランクのキャストが指名を掻っ攫っていく。
上位キャストの競争が激しいので、腰掛けキャストになんかにはチャンスがほとんど回ってこない。
新人キャストも不利になる。
他店でナンバークラスのキャストが満を持してニューアクトレスに入店しても、まずこの環境に驚く。
そして思ったより稼げない。
なぜなら競争が激しいから。
フリーで入った客が店を出るまで誰も指名しないという方が稀。
他の店で客に勝手に気に入られて指名を伸ばしていたタイプのキャストがニューアクトレスに移籍しても全く指名が取れない。
この店では率先して連絡先を交換するのは当たり前。
本指名になるまでは複数のキャストが当然のようにアプローチしまくる。
場内指名のうちは誰も遠慮しない。
だから指名トラブルも頻発する。
客は複数のキャストの連絡先を交換している状態な場合が多い。
本指名のキャスト以外はその後に連絡を取り合うのは禁止しているが、裏ではどうなのか分からない。
よって太客の指名替えが発生した時には大抵トラブルになる。
指名客を取られたと喚くキャストもいるが、そのキャストが杜撰な営業や顧客管理しかしていない場合もある。
そもそも、指名客という制度は指名キャストの特権ではない。
客の来店頻度を上げる為に責任を持って担当してもらう事が本来の目的。
それを全うしてもらう事への報酬として指名売上に応じて給料が上がっていく。
そしてその責任の所在を有耶無耶にしない為に、担当させるキャストを一人に絞る。
だからそれ以外のキャストが連絡を取り合うことを禁止している。
客の心がそのキャストから離れるという事は、指名キャストの責任を果たせていないだけなので、他のキャストに文句を言うのは責任転嫁でしかない。