闇夜に輝く
第54章 勘違い客
そんな中、ごく稀に超絶勘違いをした客も飲みに来る。
11月のある日、その事件は起こった。
二度目の来店となる40代後半の客が若い部下を連れて飲みに来た。
ニューアクトレスは今年から自動延長制になった。
これはあまりの忙しさに1時間単位の付け回しや延長確認が難しくなっていたのと、高級店という認識が広まり客層が変わった為に時間を気にせず飲みたい客が増え、いちいち延長確認に来られるのは興醒めになるというクレームが増えてきたという理由から。
しかし、新規客や久々に来店された客、フリーの客には毎時間延長確認を行うようにしていた。
その2人組の客にもその様に対応していたが、2時間を超えるタイミングで自動延長に切り替えてよろしいですかと提案すると、そうしてくれと言われた。
結局その2人組はラストまで飲み続けた。
閉店時間が迫り、会計を持っていくと年配の客の顔色が変わる。
その額16万8千円。
けれど、ニューアクトレスではその位の額の会計はよくある事。
指名を入れて、ボトルも追加し、シャンパンを頼んで4時間も滞在したらその位の額にはなる。
しかし、年配の客がこれは高すぎると文句を言いだした。
仕方がないので明細を持って行き、説明をするが、酔いも手伝って中々納得してくれない。終いには
「ココはボッタクリか!警察に行くぞ」
などと言い始めた。まだ他の客も店内に残っていた為、その年配の客だけVIP席に移動してもらい、交渉となった。