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闇夜に輝く

第54章 勘違い客



1人残された連れの若い方の客もかなり酔っ払っていて、そんなトラブルを横目に見ながらも、キャストに抱きついて甘えている。

20分が過ぎ、VIP席で何度も同じ説明を繰り返し続ける坂東さん。
イライラしているのが遠くからでもわかる。
それに対して一向に納得せず、意味の分からない文句を言い、支払いに応じようとしない年配の客。
離れた席で相変わらずキャストに甘えっぱなしの若い客。

すでに他の客はみな帰っていた。
海斗はあえて店内照明を明るくし、若い客に付いていた結衣菜さんを強引に席から外す。そしてボーイ達に閉店作業をする様に指示をした。

やっと若い客もボーイ達のその不穏な空気に気づき始める。

海斗は、結衣菜さんと一緒に更衣室に行きながら、若い客の情報を聞く。

「あの2人組ってどこの会社?」

「えーと、よくわかんない」

「え?聞いてないの?名前は?」

「おじさんの方とはあんまり話してないから。若い人は伊藤君って言ってた。インターン?みたいな事言ってたよ。学生?なのかな。でもスーツ着てるしよくわからなかった」

「あぁそれは学生だわ。ゴメンね、結構抱きつかれてたでしょ」

「まぁ、あの位なら若くてかわいい感じだったし別にどーでもいい。ラストまで時給稼げたしね」

「けど多分、出禁になるだろうから今後は連絡しなくてもいいからね」

「あ、うん。指名にはならなそうだなって思ってたからいいや」

結衣菜さんはあまり気にしていないようでホッとした。


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