闇夜に輝く
第54章 勘違い客
大笑いしながら店内に戻った海斗達。
しかし、増田さんが腕を組んで仏頂面で仁王立ちしていた。
「お前ら、全員正座!」
「「は、はい!」」
坂東さんまでも慌てて正座する。
緊張の面持ちで次の言葉を待つ。
「お前らが全員外に行っちゃうから、俺が留守番になっちまったじゃねーか!そんな楽しそうな顔で帰ってくんなよ。悔しいじゃねーか!」
全員、正座したままズッコケた。
「でもまぁ、無事解決してよかった。今日はみんな酒飲んでいいぞ。外での話を詳しく聞かせてくれよ。あ、葉山はもうしばらく正座な」
その後、みんなが楽しくビールを飲む横で、葉山君はしばらく上半身裸のまま正座させられていた。
この業界はトラブルが付き物。
そんな事も含めて楽しめないとやってられない。
後日、井上は菓子折りを持ってお詫びに来た。
しきりに、伊藤という青年と会社はもう関係ないですとか、渡辺社長のお気に入りの店とは知らずに失礼いたしましたとか、ひたすら謝っていた。
どうやら、自称地元で有名な伊藤君は内定を取り消されてしまったようです。
浅い知識では漫画の様にはいかないよと言ってあげたい海斗であった。