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闇夜に輝く

第54章 勘違い客



そのタイミングで坂東さんが井上という上司に話しかける。

「元気な若者ですねぇ。ただ、素行に問題ありそうです。だってさっきヤクザの先輩との繋がりを匂わせて私達を脅してましたからねぇ。コンプライアンスが叫ばれるこの時代に、裏社会との付き合いを大きな声で言うのは会社的にはどうなんでしょう?あ、エレベーターの中は監視カメラが付いてまして、音声もバッチリ録音されてますから」

坂東さんが悪そうな笑みでそう訴えかけると、井上は慌てて答える。

「あ、いや、伊藤君はまだうちの社員じゃないんです。インターンシップの学生なんですよ」

「あ、そうなんですか。何だ、じゃぁ渡辺社長には言わないでおきますね。井上さんも大変ですねぇ、こんな世間知らずな学生に巻き込まれてしまって」

坂東さんが井上の肩をポンポンと叩き、同情する。
そのまま、今度は伊藤に近づいていく。

「おいボウズ、お前には夜遊びはまだ早い。自分の金で飲めるようになったらこの街に遊びに来ような。あれ?せっかくのスーツがびしょびしょじゃないか。何だ集中豪雨でもあったのか?うちの店の余ってる傘、持ってくか?」

すっかり、酔いが覚めてしまった若者は寒さでガタガタと震えてその場に座り込んでしまった。
まぁ、11月の早朝に冷水を頭から被れば誰でもそうなる。

「店前だと迷惑なんで、このガキ連れてどっか行ってもらえますか?」

坂東さんは冷ややかにそう言い放った。



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