闇夜に輝く
第2章 週末の夜
午前3時をまわり、店内が落ち着いた頃、増田店長に声をかけられた。
「お疲れ!今日はお前がキャストかと思えるくらい、いろんな席で対応してたな。ご苦労だった」
「いや、当たり障りのない会話しかしてませんから」
「そんなことないぞ。酔った客相手になかなかできることじゃないからな。事実、何人かのキャストが感謝してたぞ。お前が対応した後の客はそんなに不機嫌になってないから延長が取りやすいって」
「そうなんですか。まぁ、自分にできることなんて限られてますから。つけ回しもできないし、キャスト管理してる先輩に比べればまだまだです」
「キャスト管理か……。そういえばお前ここ入ってどんぐらいだ?」
「もうすぐ4か月です」
「そうか、そろそろ次のステップにいくにはいい頃だな。やってみるか?キャスト管理」
「いえ、まだそんなレベルじゃないですから」
「お前は変わってるな。普通、黒服なんてキャストと仲良くなりたがるもんだぞ。それに比べてお前、全然キャストと話さないな」
「いや、許可が出るまでキャストとは挨拶以外の話はしてはいけないって入店の際に言っていたじゃないですか」
「お前はまじめだなぁ。どんだけだよ。もしかして女嫌いなの??」
そういって増田店長は笑っていた。
実際、海斗はこの仕事にあまり魅力を感じていない。
だから社員で入ったのにもかかわらず、アルバイトのようにひたすら氷を運び、グラスを洗い、店内清掃をし続けていればいいと思っている。
キャスト管理や売上管理、スカウトなど面倒なことこの上なく思っている。
なせならこの世界に足を踏み入れたきっかけが、しょうがなくだったせいもあるのかもしれない。