
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第21章 薔薇と百合の一夜 ①
千陽side
取り合えず、午後の授業まで保健室で休ませてほしい旨を伝えベッドに横になった。
律「あの…島崎先生、ちょっといいですか?」
「あ…はい。」
仕切られたカーテンの向こう側に田嶋先生の影が揺れ、慌てて体を起こす。
律「あ、そのままで…。ごめんなさい。お見苦しいところを見せてしまって…」
「いえ…。」
起き上がった僕を制するように、田嶋先生はシーツをかけ直してくれた。
「あの…田嶋先生、さっきのあれは…」
律「あっ…ああ…あれはその…」
唇を噛みしめ俯く。
が、意を決したようにぽつりぽつり言葉を紡いでいく。
律「彼女……幼い頃からずっと実の母親と離れて暮らしているんです。」
「やっぱり…」
律「少しでもその寂しさを紛らしてあげようと思って、何時でも訪ねてくれていいから、って言ってあげてたんですけど、でも…」
再び言葉が出口を失ってしまう。
律「ある時、昔の恋人との会話を聞かれてしまってて…」
「あ……」
あの…この間話してくれた…?
律「それからです。前にも増して彼女が頻繁に私に付き纏うようになったのは。」
