
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第22章 薔薇と百合の一夜 ②
途端、僕に向けられる目が不安げに揺れた。
「…いいんだよ、無理しなくても?今ならまだ引き返せる。」
雅「でも、さっきはもう遅い、って……」
「脅かしただけ。普通の男なら泣こうが喚こうが止めてくれないだろうけどね?」
本当は、やりきれない感情に任せて抱くつもりだったけど…。
黙ったままの彼女の体にシーツを被せ、ベッドから降りた。
雅「あの…」
「ん?」
だらしなく僕の肩に引っ掛かったままのバスローブを脱ぎ捨て、クローゼットから着替えを取り出した。
雅「もしかして…軽蔑…してる?」
「どうして?」
雅「だって…千陽さん、途中で止めちゃったから。」
「そんなことないよ?」
彼女は僕に背を向けるように体の向きを変え、ベッドサイドに腰かける僕から顔を逸らした。
「だから、ね?無理しなくてもいいから?」
身動ぎさえしない彼女の頭をそっと撫でた。
「じゃ、帰るから…。」
彼女に背を向け立ち上がりかけたその時だった。
後ろからもの凄い力で引き寄せられバランスを崩した僕は、彼女に覆い被さる形で倒れ込んだ。
雅「私…無理なんてしてない。」
彼女は、驚き、呆気にとられている僕の体にしがみついてきた。
雅「これは私にとっては儀式みたいなものなの。だから…。」
