テキストサイズ

ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第7章 恋という名の下心



千「信じて…お願い。」



俺の後ろに見えるであろう、誰かの幻に向け訴える。



しばらくして、彼は声をあげ泣き出してしまった。


ごめんなさい、と、何度も繰り返しながら。



そんな彼のことをしばらくの間黙ってみていたが、



堪らず、その儚げな体を抱きしめた。



千「けい…?」


「俺の方こそ、ごめん。」



唇を噛みしめ、小さく首を振る。



千「僕の方こそ…圭太くんの気持ち、知らなくて…。」


「お互い様だろ?」


千「…そうだね?」



はにかむように笑う彼にホッとする。



千「ね、圭太くん。」


「何?」


千「しばらく…このままでいてくれない?」


「え…?」



まだ涙で濡れたままの睫毛、跡が残る頬。



吐く息の温度が感じられるほどの距離にある顔。



柄にもなく俺の心臓は、さっきから破れそうなほどにガンガンと打ち付けていた。



「あ、あの…」


千「ん?」


「そのかわり…」



顔をまともに見れなくて俺は俯いたまま彼にとんでもないことをお願いした。



「キス……してもいい…ですか?」



しばらく、沈黙が続いたあと、何かが俺の首に巻き付けられた。



驚いて顔をあげると、その彼の顔がさらに近くにあって、



息が詰まりそうになってしまった。



千「…いいよ?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ