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淡雪

第9章 決心

『じゃあ、ここに座ってください』

璃子さんがパイプ椅子を勧める。

そこに腰掛けてじっと璃子さんの動きを見ていた。


『あの...私、なにかしました?』


僕の視線に気づいた彼女が気まずそうに言う


『あ、ごめんなさい。

 あの...僕のこと、覚えていません?』


じっと僕を見つめる彼女。

綺麗な瞳にドキドキする。


ーーやっぱり、彼女だ。


『...ごめんなさい。

 どなたでしたでしょうか』


ーーええ?!うそだろ?!


『えっと...先月 青山の書店で...』


メイク道具を拡げながら首をかしげる彼女。


僕たちの様子を見ていた洋子さんが小声で話しかけてくる。


『坂井くん、ごめんね、

 彼女 時々記憶がなくなるの

 そういう病気みたいで...』


僕は洋子さんの顔を凝視する


洋子さんは困ったように頷いた。


ーー僕が恋した彼女は...

  僕を覚えていなかった...

  なぜだ...


そのあとも、それこそ演技なんじゃないかってずっと彼女を観察し続けたけど

本当に覚えてないみたいだ...

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