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淡雪

第1章 15の春

「OK !」


「田辺くん!いいじゃないか。

 本当に芝居初めて?」


監督が僕に近付いてくる。


ん?演技してませんけど...


「田辺さんって優しい表情で見つめるんですね。ドキドキしちゃった」


相手役の山田さんまで僕を誉めてくれる。


????


「このまま本番いっちゃうから

 みんな確認して」


監督がスタッフに声をかける。




その時スタジオの奥では


槇さんのとなりでディレクターさんが


「槇ちゃん 今日も仕上げてくれたね。

 あの少年にどんな魔法をかけたんだ?

 あのくらいの少年を本気にさせるなよ」

と怪しげな目付きで囁く。


「これが私の仕事ですから。

 さじ加減は心得てます」


そんな大人の会話をされているなんて知らなかった。


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